ソフトライセンスビジネスが減速の危機にさらされている今、ビル・ゲイツ氏はオンラインサービス、広告サポートモデルに賭ける覚悟を決めたようだ。
2005年11月11日 14時38分 更新
「ああ、Webのことを忘れていたよ!」
これはビル・ゲイツ氏がかつて見た悪夢だ。11月9日に報道機関に配布されたメモの中で同氏が認めている通り、Microsoftは10年前、Webの台頭とNetscapeに不意を突かれた。今、再び巻き返しを図る時が来た。
この10年で、Googleは「興味深い技術プロジェクト」から「巨大メディア」へと成長した。ソフトライセンスビジネスが減速の危機にさらされている今、ゲイツ氏はオンラインサービス、広告サポートモデルに賭ける覚悟を決めたようだ。
ゲイツ氏は先週の上級幹部あてのメールの中で次のように述べている。「サブスクリプションやライセンス料に加えて、直接的、間接的にソフト・サービスの開発と配布の資金をまかなう新たな手段として広告が浮上してきた。数十人規模から数十億人規模に拡大できるように設計されたサービスは、エンタープライズや小規模企業に提供できるソリューションの性質とコストを劇的に変えるだろう」
このメモは先週の「Windows Live」「Office Live」立ち上げ前に、Microsoft上級幹部に送られた。広告サポート付きのWindows Liveは、Hotmailのアップデート版であるWindows Live Mailと、Windows Live Messagingを提供する。
MicrosoftはWeb検索市場のシェア、そして検索のもたらすペイパークリック広告の売上をめぐりGoogleと競争している。
同じく報道各社に提供されたメモの中で、同社のレイ・オジーCTO(最高技術責任者)は今後の展開に向けた3つの信条を挙げた。「広告サポートのビジネスモデル」「無料トライアル、アドウェア、サブスクリプションなどさまざまなオプションの付きでソフトをWeb配信する」「各種デバイス・プラットフォームからアクセスできるサービス」の3つだ。
オジー氏は3月に、自身の設立した会社Groove NetworksをMicrosoftに売却した(3月11日の記事参照)。GrooveのWebベースコラボレーションアプリケーションは、次期版Officeに組み込まれる予定だ。
オジー氏は、MicrosoftのWebベースサービス戦略のリーダーと目されている。
同氏はメモの中で、12月までに製品部門を率いる「シナリオオーナー」を指名すると約束している。1月から、各製品部門はこの新たな信条に従う。
社内では既に変更が進んでいるとMicrosoftのテクニカルエバンジェリストでブロガーのロバート・スコーブル氏は語る。同氏によると、一部のチームは既にサービス推進に取り組んでおり、「既にその先端が現れている」という。
その先端にはWindows LiveとOffice Liveが含まれる。Windows Liveのβ版は既に稼働している。
Jupiter Researchのアナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は、Microsoftは以前から「ライブソフトウェア」のコンセプトに取り組んできたが、Googleのサービスと比べると多くの点で保守的だと語る。「Microsoftは、WindowsとOfficeという2つの稼ぎ頭を脅かしかねないと思われる問題に気付いた。彼らは、これらの製品を守るために先手を打ちたいのだ」と同氏。だが、これは今に始まった問題ではない。「Webの誕生以来、これはMicrosoftにとって問題だった。(Webでは)Windowsは必ずしも必要というわけではないからだ」
「(Windows Liveが)解決策になるのか、あるいはこれが必要なのかどうかすらまだ分からない」と同氏は付け加えた。
スコーブル氏は、広告付きソフトは検索広告よりも難しいだろうが、MicrosoftにはGoogleのWebベースサービスをまねるつもりはないと話す。
Webアクセスにも、アプリケーションをコンピュータにロードすることにも利点がある。「そこに当社の力を活かせる。当社はそれを理解しているし、そこがWebオンリーのモデルに対抗できる点だ。当社はWebとWindowsの両方を合わせたサービスのやり方を見出すと思う」と同氏は語る。
スコーブル氏は、Microsoftの新たな進路が実を結ぶまでには1〜2年かかるかもしれないと話す。「Officeで何かクレイジーなことをやるとか、そういった大きな動きが見られるのはおそらく3〜4年後だろう。まずはOffice 12をリリースしなくてはならない」
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